■Baculovirus■

~ リアル・ゾンビウイルス ~
いままでにも生物 (宿主) をゾンビ化させるいろいろな寄生生物を紹介してきましたが、今回のゾンビ化のターゲットとなる生物は蛾 (マイマイガ) の幼虫、つまりイモムシ (毛虫) です。
数多くのゾンビ映画が制作されていますが、ゾンビ化する要因に架空の「ゾンビウイルス」のようなものが登場することは少なくありません。
今回、イモムシがゾンビ化させるのは、今までに登場した昆虫や細菌などではなくバキュロウイルスというウイルスによるものであり、イモムシたちにとっては「実在するゾンビウイルス」といえます。
この「ゾンビウイルス」に感染したイモムシは映画のゾンビのように凶暴化し仲間を襲ってゾンビ化させる、といったことはしないものの、かれらが待ち受けるのは映画のゾンビたちよりも恐ろしい末路です。
~ マイマイガ ~
ちょっと横道にそれて、被害者であるマイマイガについて。
マイマイガは英語でジプシー・モス (Gypsy moth) といいますが、これは生まれたてのマイマイガの幼虫は毛を吐き、風に乗って生まれた地点からいろいろな場所へ流浪の旅 (ジプシー) をすることから名付けられました。
ちなみに成虫になるとメスはオスより遙かに体が大きくなるため、重すぎて飛ぶことが苦手です。いっぽう、体の小さいオスは軽やかに飛びまわることができます。
~ ゾンビ化 ~
話を戻しましょう。ウイルスに感染したイモムシは見た目 (ルックス的にも行動的にも) は変わらず、しばらくの間、健常なイモムシと何ら変わりありません。
ウイルスにとってイモムシたちを即死させることなど造作もないと思われますが、ウイルスの真の目的はイモムシを殺すことではありません、あくまで自ら (バキュロウイルス) を増殖し、後継者を残すことが目的です。なのでしばらくは放置プレーです。
感染したイモムシたちを数日間観察したとしても、前述の通りその姿も行動にもなんの変化も感じられないことでしょう。しかし、見た目は変わっていませんが、実はイモムシは脱皮しなくなっています。
今回、このバキュロウイルスの研究を発表したフーバーさんは「脱皮しないのはウイルスにとって好都合なことだ。幼虫は餌を食べ続けることになるので、どんどん体が大きくなり、そのぶん多くのウイルスが作れる」と言っています。
ウイルス自らが増殖する時間が必要なため敢えて生かしておいてるともいえます。
~ イモムシの最期 ~

ウイルスに感染したイモムシはその末期、抗 (あらが) うことのできない見えない力によって、より高い場所へと導かれます。木の上方へ上方へと昇っていくのです。
死に適した場所に達するとそこでイモムシは動きを止め死ぬまで、いや死んでもそこを離れることはありません。その地点こそ、このイモムシの最終到着点なのです。
まるで蛹化 (ようか) 前のようにじっと動きを止めているイモムシですが、決して蛹 (さなぎ) になることはありません。前述の通り、バキュロウイルスに感染したイモムシは脱皮できないからです。
やがてイモムシには死が訪れます。
~ ゾンビ・レイン ~
死してわずか数時間後、イモムシの体は内部からドロドロに溶解し始め、液状になったイモムシの体は雨のようにしたたり落ちます。
その液状になったイモムシの体には増殖したゾンビウイルス (バキュロウイルス) でいっぱいです。
ソンビウイルス入りの「溶けた体」は同種のイモムシの食べる葉の上に無造作にしたたり落ちます。
何も知らない仲間のイモムシたちはその「溶けた体」ごと葉を食べることによってウイルスを体内に取り込み、またかれらもゾンビと化する運命に陥ります。
そう、より多くのイモムシたちにゾンビウイルスをばらまきたいが為、ウイルスはより高見へイモムシを導き、そして殺すのです。
~ バキュロウイルス変異 ~

バキュロウイルスは現在のところガをはじめとする無脊椎動物にしか感染しないので人間には全く害がありません、が、もし、バキュロウイルスが変異し人間にも感染する殺人ウイルスと化したら?
ちょっと想像してみましょう。
ある休日、あなたは友人と街にショッピングへと出かけます。
休日の街です、多くの人々でごった返しています。あなたと友人は買い物したりランチを楽しんだり、十分に休日を満喫しています。
友人はいつもの友人です、見た目も変わらず、細かい仕草に至るまでなにも違和感を感じさせません。
ランチを終え、あなたと友人は他愛もない話をしながら当てもなくぶらぶらと歩道を歩いています。道路を渡ろうとしたとき、運悪く信号が点滅し赤に変わりました。
信号が青に変わるまで、ほんの少しの間、あなたと友人は無言となりました。やがて信号は青に変わり横断歩道を渡ろうとしたとき、異変を感じました。さっきまで隣にいた友達がいません。
後ろを振り向くと、友達は横断歩道を渡ろうとせず、信号待ちをしていたその場所に立ちつくしているのです。ぼんやりとした顔つきで、交差点に立つ電信柱を眺めています。
電柱に何か見つけたのでしょうか?
あなたは友人を呼びに戻ります。と、突然友人は眺めていた電柱によじ登り始めます。友人の意外な行動にあっけにとらたものの、気を取り直して降りてくるよう説得します。
しかしあなたの制止を振り切り、友人は上へ上へと昇り続けます。これ以上のぼれないという地点まで到達すると、友人は電柱にしがみついたまま微動だにしません。
なにが起きているのかまったく分かりません、気がつくと呆然と立ちつくすあなたの周りには、この異変に気付いた人々で人だかりができています。
友人が電柱に昇りどれぐらい立ったのでしょう、いつの間にか警察もいます、誰かが呼んだのでしょう。
警察は拡声器を使い電柱の上にしがみついている友人になにやら話しかけています。あまりのことに警察が友人を説得する拡声器を通した大きな音もほとんど耳に入ってきません。
友人は警察の声に一切反応をすることはありません、微動だにしないのです、まるで死んでいるかのように。
実は死んだように動かなかったのではなく、すでに事切れていたのです。
友人が電柱に昇ってからどれぐらい立ったのでしょう、あなたの声にも警察の声にも一切反応しなかった友人が突如けいれんを起こし始めました。危ない、落ちる、と皆が思うのもつかの間、友人の体は突如張り裂け、液状化した体は電柱を取り巻く人々に雨のように降り注ぎました。
そう、友人の体はバキュロウイルスに蝕 (むしば) まれていたのです。
液状化した友人の体は、ほとんどの人にとっては髪の毛や服を汚す程度で済みましたが、一部の人々には鼻や口を通し、知らず知らずのうちにバキュロウイルスが体内に取り込まれてしまいました。
悲劇から数週間後、友人の衝撃的な死からいまだ立ち直ることができないあなたですが、花を添えようと友人の死んだ電柱に訪れました。
目を閉じ黙祷を捧げその場を立ち去ろうとするとするあなた、しかし、どうしてもその場を離れることができません。電柱に昇りたいという衝動を抑えきれないのです、どうしたのでしょう?
<参照サイト>
● ナショナル・ジオグラフィック
<この記事のURL>
http://umafan.blog72.fc2.com/blog-entry-856.html
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まさか、飛沫感染や空気感染などせず、溶けた肉を同族に食わせて増殖しようとするとは…
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その牙がこちらに向かないことを切に願うばかりです。