■Pseudodiplorchis americanus■

(スキアシガエル)
~ トキソプラズマ ~
以前に紹介したトキソプラズマはとてもセンスの良い寄生虫に思えます。
本来はネコとネズミを行ったり来たりするだけで事足りるのに、現在では地球上の人類の半分ぐらいに寄生している可能性が示唆されているからです。
確かに、人間に寄生したところで、トキソプラズマにはなんのメリットもありませんが、それでも今後の展望を見据えて、地球上のどこにでもいる人間に目を付けるというのは「センス」を感じます。
人間はあらゆる乗り物を利用して世界中のどこにでも行けますし、そんじょそこらの野生動物とは行動範囲が違います。
人間からさらに自分たちの子孫をばらまく方法を思いつけば、地球はトキソプラズマの天国になることでしょう。
~ 寄生するのに不都合な相手 ~

(長期間の絶食に耐えるホライモリ (オルム))
今回の主役はもちろんトキソプラズマではありません。
センスの悪そうな人 (寄生虫) にスポットライトを当ててみたいと思います。
寄生虫にとって都合の悪い宿主 (寄生虫の寄生する相手) は、やはり行動範囲が狭く、活動的ではない動物を指すものと思われます。
そういった宿主は、いつまで経っても自分たち (寄生虫) を遠くまで運んでくれませんし、活動的ではないので、他の個体に寄生するチャンスも著しく低くなってしまいます。
自分が寄生虫の立場になって考えると、何が一番寄生したくない動物になるでしょう?
ナマケモノ?
冷静に考えると、あり得ないほどひどい名前を付けられているナマケモノですが、実際、一日の睡眠時間が20時間を超えるといわれており、あまりに動かないため体に苔が生えてしまって保護色になるほど怠惰に見える生き物です。
が、そうはいっても毎日数時間であれ、のんびりと木の葉を食べているわけで、哺乳類としてはビックリレベルのだらけようですが、それほど怠惰というわけでもありません。
やはりもっとだらしないのは哺乳類のように代謝が激しくない、変温動物に限ります。
数日はおろか、数ヶ月、下手すると年単位で絶食に耐えうるのは変温動物の得意技です。
イモリやカエルなどには恐ろしく長い期間、絶食に耐えることが出来るものが知られています。今回はカエルを見ていきます。
~ コーチスキアシガエル ~
カエルというと田んぼなどにいるカエルを連想しますが、通常の生活ではほとんど水と無縁のカエルも珍しくありません。
以前に紹介したオーストラリアのカメガエル (タートル・フロッグ)、インドのインドハナガエルなどをはじめ、土中生活に適応したカエルもたくさんいます。

(パープルフロッグことインドハナガエル)
そういったカエルのひとつとして、アメリカ、アリゾナ州の砂漠地帯に棲むスキアシガエルの一種、コーチスキアシガエル (Couch's Spadefoot Toad, Scaphiopus couchii) がいます。
かれらの引き籠もりぶりは驚くほどで、1年のうち10~11ヶ月は地面深くですやすやと眠っています。
雨期の1ヶ月かそこらだけ、深い土中からもぞもぞとはい出てきて、パートナー探し・食事をします。
いくらなんでも、こんなカエルに寄生する寄生虫がいるわけありません。こんなカエルに寄生して生計を立てていくとしたら絶滅まっしぐらです。
と、いいたいところですが、いるのです。
プセウドディプロルキス・アメリカヌスです。
~ 乗り換えのチャンス ~
こんなセンスの悪い寄生虫がいるのでしょうか。
プセウドディプロルキスの仲間は魚に寄生してもやっていける寄生虫ですが、なぜカエル、しかもよりによってこんなカエルを選んだのでしょう。
自分が吸虫だとして、友達の吸虫からこんな相談をされたらどうしましょう?
「おれ、魚の血やめて、これからはコーチスキアシガエルの血でやっていこうと思う」
などと真顔で宣言されたら、絶対「やめとけ」といわずにはいられなくなります。気でもふれたのかと思ってしまいます。
寄生するのは勝手ですが、こんな怠惰なカエルに寄生して、子孫を残していけるものなのでしょうか?
子孫を残すには、最低でもこのカエルの寿命が尽きる前に、このカエル以外の個体に子供が移動しなければいけません。
しかし、前述の通り、このカエルは非常にのんびりとしており、自然下では1年のうち1ヶ月ぐらいしか外界と接することはありません。
といか、乗り移るチャンスだけをいうと1ヶ月どころか2~3日しかありません。
このカエルが他の仲間たちと接するのは、限られた雨期の繁殖シーズン、この数日間の夜の間だけです。
長い眠りから覚めたコーチスキアシガエルが仲間の集まる束の間のプールに到着すると、1年分の老廃物を膀胱内からプールへと解き放ちます。
カエルの膀胱内でこのときを待ちわびていた吸虫、プセウドディプロルキスの母親は、ここぞとばかりカエルの老廃物 (尿) に自分たちの卵を紛れ込ませます。
卵は水にさらされるとあっという間に孵ります。プセウドディプロルキスの赤ちゃんたちはカエルを探すだけ。
一時の簡易プールとはいえ、砂漠に住む他のカエルや動物たちも水浴びを楽しみに来ていることでしょう。
いい加減な動物にたどり着いたところで生きていくことは出来ません。必ずコーチスキアシガエルに上陸しなければいけません。さもなければ死亡確定です。
理由は分かりませんが、さすがコーチスキアシガエル専門に特化したプセウドディプロルキス、コーチスキアシガエルの体から分泌される何らかの化学物質を手がかりにしてでしょうか、間違いなく目的のカエルに上陸します。
~ センスが良い? ~
多くの住血吸虫は運任せの壮大な旅に子供たちをゆだねますから、一生の間、卵を無数に生み続ける必要がありますが、プセウドディプロルキスはそれほどの卵を産み落としません。
一時的なプールには、他の動物たちも集まってくる可能性はありますが、なにせこのプールの中のコーチスキアシガエルの人口密度は非常に高く、他の動物との判別さえ出来れば、探すのに大して苦労はしないからです。
寄生虫は多くの場合、宿主と運命を共にしますが、コーチスキアシガエルは無闇にうろつくことは皆無ですから敵に襲われることも少ないですし、プセウドディプロルキスにとって非常に安全な住まいともなります。
そう、かれらはセンスが悪いどころか、もっとも楽々と次の世代を残すことが出来る、非常にセンスの良い吸虫なのです。
吸虫に取り付かれてしまったコーチスキアシガエルですが、この時期に、次の雨期がくるまでおなかが空かないよう、大好物のシロアリなどを1年分食いだめします。
そして名前の由来 (スペードフット・トード 「鋤 (すき) の足のヒキガエル」) となっている、鋤のような穴を掘るのに便利な後ろ足で約1メートルの深さまで穴を掘ると、またも長い長いお休みに入ります。
コーチスキアシガエルにしても全然だらしないどころか、体温を一定に保ち続けるため、毎日毎日あくせく食べてばかりいる人間たちの存在を知ったら、きっと気の毒に思うことでしょう。
人間から見ると、センスの悪い吸虫、怠惰なカエルにしか見えないこの2つの生き物、それはあくまで人間視点からの印象であり、彼らは何不自由なくずいぶんうまくやっているようです。
<参考サイト・文献>
● パラサイト・レックス (カール・ジンマー著)
● CAT.INIST
<この記事のURL>
http://umafan.blog72.fc2.com/blog-entry-750.html
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寄生虫にしとくにゃ勿体無い。
食べて行ければいいって人がこの事を知ったら羨ましがりますね~(笑)
「シュード」:偽(にせ)の
11ヶ月睡眠と11ヶ月分一気排泄・・・ 気持ち良さそうですね(笑)