■フルディア・ヴィクトリア (ビクトリア)■
■Hurdia victoria■
~ カンブリア大爆発 ~
(ハルキゲニアの化石)
恐竜が現れる遙か前、カンブリア紀の海には突如、奇妙奇天烈な動物たちが現れました。
上下前後も分からないほどユニークなハルキゲニア、掃除機のノズルを思わせる吻 (ふん) を持ったオパビニア、背部に剣山のような突起を生やしたウィワクシア、泳ぐ湯たんぽオドントグリフス、、、
(オパビニア)
その他にも魅力溢れる生物たちでごった返しています。これら魅力的な生物たちはスティーブン・ジェイ・グールドさんの「ワンダフル・ライフ バージェス頁岩と生物進化の物語」で一般的にも広く知られることになりました。
そんな中で、もっとも知名度が高く、かつ人気のあるもののひとつがアノマロカリスといえます。
口と触手と胴体、それぞれバラバラに見つかって、しかもそれぞれの部分が単独の生物と認識されていたことは有名な話です。
この時代、一気に動物たちが現れたことは確かですが、そのほとんどは10センチを超えることはなく、上記のハルキゲニアは2~3センチ、オパビニアも5センチ前後です。
アノマロカリスの各部分がそれぞれ単独の生物として認識されたのは、その形もさることながら、それぞれの器官の大きさがカンブリア紀の動物たちの標準的な大きさだったからです。まさか巨大な生物の一部分だとは考えも及ばなかったのです。
(初期のハルキゲニアの復元。
右側が頭部、背中の触手でエサを捕らえていたと考えられていました。 ちなみに発売当初の「ワンダフル・ライフ」の表紙にはこの逆さまバージョンのハルキゲニアが描かれています)
(現在のハルキゲニアの復元
上下前後が逆だったことが判明しました)
しかしアノマロカリスは巨大な生物でした。バラバラに認識されていた「生物」たちをつなげると、体長は60センチ以上にも及ぶことが判明したのです。
イカの食腕を思わせるしなやかそうな触手で獲物を捕らえ、強力な顎でかみ砕いていたことでしょう。
現在知られているカンブリア紀最大のアノマロカリスが、この時代の海で食物連鎖の頂点に君臨していたことは確実ですが、アノマロカリスのライバルになりそうな巨大な生物が登場しました。
~ フルディア・ヴィクトリア ~
(コウイカ風に復元されたアノマロカリス)
今回の主役はフルディア・ヴィクトリア (Hurdia victoria) です。
このフルディアは実は100年ほど前にすでに発見されている生物です。しかし今回復元されたような生物だとは思われていませんでした。
現在知られるカンブリア紀のほとんどの生物を、カナダのバージェス頁岩 (けつがん) で発見・命名したのはチャールズ・ドゥーリトル (ドリトル)・ウォルコットさんですが、その中にこのフルディアも含まれています。
グールドさんは「ワンダフル・ライフ」でウォルコットさんの分類法を「ウォルコットの靴べら (カンブリア紀の生物をすべて既存の門に靴べらで押し込むように分類していることから)」と強烈に揶揄 (やゆ) していますが、グールドさん風に表現すればフルディアも靴べらで押し込まれていたようです。
(オドントグリフス)
さて、フルディア・ヴィクトリアの「正しい」復元がこんなにも遅れたのは、アノマロカリスと同じ原因だったようです。すなわち、大きすぎてバラバラに保存され、かつバラバラにそれ自体が完全な生物と認識されていたからです。
フルディアの最大体長は驚きの50センチ、アノマロカリスの仲間に属し、アノマロカリスのように獲物を捕らえるであろう触手を1対備えており、全体的にも比較的アノマロカリスに似た姿をしています。
ただし、頭部にずいぶんと立派な盾というかフードを持っており、ここがアノマロカリスと決定的に異なる部分です。
気になる頭部のフードですが、これの役割は現時点では不明で、この時代の最大級の捕食者であることから頭部を守るためのものではなかったと考えられています。
(背中に剣山、ウィワクシア)
とはいえこれだけ大きな付属物が役に立たないとは考えにくく、海底を歩く獲物を上からかぶせて逃げられないようにしてから捕らえたとか、ヘラチョウザメやノコギリザメのように砂底のエサ探知機に使用したとか、真実は分かりませんが、なんらかの用途はあったことでしょう。
体全体はエラで覆われており、この巨体の隅々まで酸素を供給するのに一役買っていたとのこと、この高性能の酸素供給システムによりカンブリア紀の海を悠然と泳ぎ回ることができたことでしょう。
天国のスティーブン・ジェイ・グールドさんにも是非見てもらいたかった生物です。
<参考サイト・文献>
● Scientific blogging
● ワンダフル・ライフ (スティーヴン・ジェイ・グールド 著)
<この記事のURL>
http://umafan.blog72.fc2.com/blog-entry-720.html
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でも、最近は、バージェス関係の生物は見かけ程は奇妙ではなく、既存の生物の分類を適用できる、という流れになってきて、ちょっとがっかりしてます。
はは、アノマロカリスも節足動物とかですものね。でも門はどうであれ、そのデザインが素晴らしいので、CGやイラストは何度見ても飽きないですねぇ。
話を変えてー・・・(黒|いきなり話変えんなよw
自分が知ってる1番名前が長い生物は「エンカイザンコゲチャヒロコシイタムクゲキノコムシ
始めて聞いた人が5秒で言えたらスゴイw!!
言い易いように「宴会山 焦げ茶 広子 敷いた むく毛 キノコムシ」だすb
たぶん捕食のために使われていたのは間違いないと思うんですけど・・・
全身がエラなので体の割に軽そうなので潜水の為の重しにしたかも知れませんし・・・
僕は盾でもいいんですけどね^^
なんせまだまだ巨大な捕食者がいた可能性があるかもしれないですからね。
この時代の無限の選択枝からたまたま私たちがいるわけですが、ほんの少しの道の違いでまったく違った生き物が進化したわけです。また、そういった進化したまだ見ぬ動物が「もしかしたら地球のどこかにいるのでは?」と思うとぞくぞくします
『神は沈黙せず』山本弘 角川書店
という小説の中に、環境をさまざま変化させることで生物進化をさせるコンピューターゲームが出てきますが、そのゲームがカンブリア時代はまさに実際にあったんですよね....
バージェスの生物たちにもカギムシのご先祖様が登場します。アイシェアイアなんかは姿はもちろんハルキゲニアなんかも有爪動物と考えられていますよね。
ところで、エンカイザンコゲチャヒロコシイタムクゲキノコムシは知らなかった(笑)
で、そうそう、防御のためだったらもっと巨大な、もしくはもっと攻撃力の高いカンブリア紀の生物がいた、ってことになる可能性がありますから、それはそれで楽しいです。
生物進化の結果として人間が偶然か必然か?今でも論争の的ですが、これは本当に興味深いですよね。
宇宙物理学では「必然」との声が優勢っぽいですが、その両者の主張も読んでみるととても興味深いです。この三流ブログの範疇を超えていますから敢えてコメントは避けますが、本当に興味深い論点です。そのために違うブログを立ち上げようか迷っているほど興味深いです。
神はさいころを振ったか降らないか?無神論者の管理人にはいずれの主張も楽しくかつ興味深いものです。
たったあれだけの文章で、伝えたいことをすべて理解していただいて...というかナムさん自身がつねに考えてる謎でもあったわけですね。
『神はさいころを振ったのか降らないか?』アインシュタイン、ニュートンファンの私にはほんと心につきささる言葉です
H.P.ラブクラフトが見たら泣いて喜びそうなデザインですね
ウィワクシアも実は上下逆だったとか
ハルキゲニアはじつは横に寝転んで生活していた
とかもっと面白い発見(というかオチ)はないかなぁ
人間が生まれたのは偶然か、必然かは進化論の話を読むたびに何度も考えさせられます。どっちの言い分も甲乙つけがたい素晴らしい論理の組み立て。さて僕はどちら派でしょう?ハイゼンベルクが好きということは?