■四肢で陸上を歩く最古のクジラ パキケトゥス (パキケタス)■
■Pakicetus inachus■
さて、久しぶりの更新です。今年に入ってからも生物関連のニュースはたくさんありますが、その中から個人的な趣味にはしり、みなさんがもっとも興味なさそうなマイアケトゥスをピックアップします。
~ 良い母親クジラ ~
「(良き) 母親トカゲ」という意味を持つマイアサウラという恐竜がいます。
マイアサウラが、恐竜の中ではじめて子育てをしていた証拠が発見されたからです。
しかしいっぽう、マイアサウラ同様、卵を抱いている状態で化石が発見されたにもかかわらず、「良き母親」の名前を付けてもらうどころか「卵泥棒」なるひどい学名を付けられてしまったオヴィラプトルもいます。
化石が見つかった当時、オヴィラプトルが他の草食恐竜の卵を盗みに来た状態で化石化されたものと勘違いされたからです。肉食で狡猾そうな見かけが徒 (あだ) になってしまいました。
学名は一度付けられたら最後、オヴィラプトルは今後も「卵泥棒」と呼ばれ続ける運命にあります。
さて、今回あらたに「良き母親」の学名を与えられた古生物がいます。クジラの遠い祖先で、「良き母親クジラ」という意味の、マイアケトゥス (or マイアケタス, Maiacetus inuus) という素敵な名前をつけてもらいました。
~ ギンゲリッチ ~
(ギンゲリッチ博士)
マイアケトゥスは「(良き)母親のクジラ」という意味で、母クジラと胎児が一緒に化石化されたことでこの名前が付きました。
この化石を発見したのは古生物学者、フィリップ・ギンゲリッチ (Philip D. Gingerich)、ひょんなことから絶滅クジラにのめり込むことになった、絶滅クジラのスペシャリストです。
絶滅クジラにのめり込むきっかけは、まだ若かりしギンゲリッチがパキスタンでメソニクス類の化石発掘を行っている際に、少なくとも現在のところ最古のクジラ (5300万年前) と考えられているパキケトゥス (パキケタス) の化石を偶然発掘したからです。
今回はこのパキケトゥスにスポットライトを当ててみます。
ちなみに「アンブロケトゥス」とか「ロドホケトゥス (ロドケタス)」「タクラケトゥス」「ガヴィアケトゥス」などなど、クジラの学名に「~ケトゥス (ケタス, cetus)」とついている名前が多いのは、ケトゥスというのが「クジラ」という意味だからで、パキケトゥスは「パキスタンのクジラ」という意味です。
パキケトゥスは「最古のクジラ」として有名ですから、ご存じの方も多いと思いますが、いったいどこをどう見ればクジラなのか疑問に思っている人も多いと思います。
水棲UMAの正体として頻繁に登場するムカシクジラ類のバシロサウルス (ゼウグロドン) であれば、現世のクジラとずいぶんと姿は違うといっても、やはり「クジラ」といわれれば納得がいきます。
しかし、パキケトゥスの場合はどうでしょう?体長は2メートル前後、ウシやウマのように蹄を持ちますが、頭部を見ると肉食獣そのもので、一見するとオオカミのような姿をしています。
ギンゲリッチも発掘当時は、かつてクジラの祖先として有力視されたメソニクス類と思ったほどだったといいます。
ギンゲリッチが発掘したのは、パキケトゥスの頭骨のみでしたが、この謎の哺乳類が「クジラ」であることを立証するに十分でした。
クジラには他の動物にはない独特の特徴を備えているからです。
~ パキケトゥス ~
パキスタンから持ち帰った「謎の哺乳類の頭骨」を1年がかりで整形すると、頭骨の下に「形も大きさもブドウ」のような骨を発見しました。
この骨は現世のクジラのものとはちょっと異なるものの、紛れもなくクジラ特有の分厚い耳骨 (じこつ) であることをギンゲリッチは突き止めました。
クジラには絶滅種・現世種に限らず、他の哺乳類には見られない、耳の構造 (内耳 (ないじ) の耳骨) に特徴があります。
というのも、クジラは哺乳類でありながら水中で音を聞かなければならないからです。クジラは水中を伝わる震動を顎でキャッチし耳に伝えます、いわゆる骨伝導です。
また、音源の方向を正確にキャッチするために、クジラの耳はどんなに水圧がかかろうとも頭骨から常に宙づり (隔離) 状態に保たれています。
(バシロサウルス)
一方、パキケトゥスの耳骨は宙づりではなく、顎に固定されていました。固定されていると固定した部分からも振動が伝わってきてしまうため現世のクジラほど水中の物音に敏感ではなかったと推測されています。
それはパキケトゥスが、それこそ見ての通り、あまり水中には適応しておらず、その大部分の時間を陸上で暮らしていた証拠ともいえます。
前述したとおり、パキケトゥスの体長は2メートル前後、蹄を持った四肢動物で、浅い水辺とその付近の陸上を主な生活場所としていました。
その姿もそして生活スタイルも現世のクジラとはかけ離れたものです。
しかし、これが進化の不思議なところ、それからわずか1000万年後にはバシロサウルスが現れます。
パキケトゥスが4本足であっても「クジラ」であったことに疑いはありません。
<参考サイト・文献>
● 水辺で起きた大進化 (カール・ジンマー著)
<この記事のURL>
http://umafan.blog72.fc2.com/blog-entry-714.html
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でもわずか1000万年で
一気に進化するなんて不思議ですね・・・
こんな進化したって事は
突然変異が出てきたんですかね??
いったいどんな特集?で、それともマンガの中にですかね?
クジラの進化の話はとてもおもしろいんで、他にもいろいろ書きたいんですが、この手の記事はあまり人気がないかなー
そーですか??
僕は結構好きですけどね^^
鼻の位置なんか思い切った大移動しましたね^^
何万年もかけて少しづつ遺伝子の変化をリレーしてきたと思うとロマンを感じます
ちょっと気になったのですが、今のクジラの尾びれは後足が進化したんでしょうか?シッポが進化したんでしょうか?
本当にわずかな違いで分類していきますから、クジラはまだ良いほうだと思います。
ところで、たまーにクジラ関係載せていこうかな、とは思ってます。
クジラの尾びれは尻尾です、パキケトゥス以降、だんだんと脚は退化していきますが、ゼウグロドンはまだ小さい後肢を持ってます。オットセイとかの鰭脚類なんかは泳ぐとき後肢の足の裏側をくっつけて尾びれみたいにしてますけどね。
最初見たときはイタチ科の祖先かー!?
って思いましたけど、全然違いました(笑)
クジラの祖先なんですね~。似ても似つかないなぁ。進化ってやっぱりすごいですね…。歯があるっていうことは、ハクジラ類の祖先なんですか?ヒゲクジラ類も…?ちょっとそこはよくわからないですが^^;
それにしても、クジラの耳の構造はすごいですね!驚きました。
ちょっと前に
後脚の生えたイルカが見付かったみたいですね
http://hikaku-lin.com/link/register.html
こちらより、相互リンクしていただけると嬉しいです。
まだまだ、未熟なサイトですが、少しずつコンテンツを充実させていきたいと思ってます。
突然、失礼しました。
9wx0LrHH