■寄生蜂ブードゥーワスプ (コマユバチ) とゾンビイモムシ■
■Voodoo wasp (Glyptapanteles) & zombie caterpiller■
(ブードゥー・ワスプとゾンビキャタピラの動画
※ 画像をクリックするとYouTubeに飛びます)
ちょっと寄生生物系のネタの書き置きがたまりすぎているので、取り敢えずひとつだけアップします。
~ ブードゥー教とゾンビ ~
ホラー映画の定番、ゾンビ。
ゾンビ映画のゾンビは、もともと「実在」するゾンビが元になっています。
実際のゾンビは、映画に出てくるゾンビとちょっと違い、「生きる屍 (しかばね)」 ではなく、「死人のような人間」です。
諸説はありますが、基本的にゾンビとはブードゥー (ヴードゥー) 教に伝わる秘伝の粉、「ゾンビパウダー」なるものを人間に飲ませることによって、「つくる」ことができます。
ゾンビパウダーを飲まされゾンビ化した人間は、まるで死人のように生気のない顔色をしており、知らない人が見れば死人が歩いているように見えるといいます。また、ゾンビ化した人間は自我を持たないため、意のままに操ることが出来るといいます。
なお、ゾンビパウダーはフグ毒、テトロドトキシンを主成分とし、絶妙な配合により人間を死に至らしめず、ゾンビ化させることが出来る魔法の粉だといわれています。
と、これが「現実世界のゾンビ」なのですが、テトロドトキシンにそのような効果はなく、ふつう死ぬか昏睡状態に陥るかで、自我を忘れてさまよい歩く、意のままに操ることが出来る、などというのはあまり信憑性はありません。
しかし、ネイティブなどに古くから伝わる薬草の調合は、経験則から来る現代科学でも解き明かされていない不思議なものも存在するほどですから、存在しないとは言い切れません。
さて、本題のブードゥー・ワスプの話に移りましょう。
ブードゥー・ワスプの「ブードゥー」はもちろん、ブードゥー教のブードゥーで、ワスプとはスズメバチとかアシナガバチなどの狩りバチ (狩人バチ) ことです。
ブードゥー・ワスプと呼ばれているのは、コマユバチの一種 (Glyptapanteles) で、当然、「ブードゥー・ワスプ」という呼び方は俗称です。
一方、ブードゥー・ワスプにゾンビにされるほうは、「ゾンビ・キャタピラ (「キャタピラ」とは英語でイモムシのことです)」と呼ばれていますが、こちらはシャクガという蛾の幼虫です。
~ ブードゥー・ワスプの寄生 ~
(卵を産み付けられるシャクガの幼虫)
寄生する生物は、宿主 (寄生される生物) に多かれ少なかれ、宿主の意志に関係なく寄生側に都合のいい行動をさせる場合が少なくなくありません。
そういったことから宿主側は「ゾンビ化させられる」と表現される場合が多々あります。
ブードゥー・ワスプはシャクガの幼虫 (イモムシ) の体内に直接卵を産み付けます。一匹のイモムシに産み付ける卵の数は80個ほどだといいます。
ここまでは珍しいことではありません。多くの寄生蜂が行っているありふれた行動です。
イモムシの体内で孵化した幼虫たちはムシャムシャと生きているイモムシの新鮮な肉を食べ、サナギになるころにはイモムシは死亡してしまいます。
と、これは普通の寄生蜂の話。ブードゥー・ワスプの幼虫はちょっと違います。
生きたままイモムシの体内を貪 (むさぼ) り食うのは同じですが、イモムシの生命を奪ったりはしません。
サナギになるころには礼儀正しくイモムシの体から次から次へとぞろぞろと兄弟姉妹が出てきます。
「体をちょっと食べちゃったけど、もうご迷惑はおかけしません、それではさようなら~」と。
しかし、さよならはしないのです。
~ ゾンビイモムシ ~
(ブードゥー・ワスプのサナギと共に居座り、
サナギの用心棒を買って出るイモムシ)
さよならしないのは、ブードゥー・ワスプの幼虫たちの方ではなく、シャクガの幼虫、つまり体を食べられていたイモムシのほうなのです。
ブードゥー・ワスプの幼虫たちは、イモムシの体から這い出ると、すぐその場でサナギに変態します。
イモムシのほうはどっかに行けばいいのですが、その場にとどまります。エサも摂らず、かといって自分を食べていたブードゥー・ワスプの幼虫 (サナギ) に攻撃を仕掛ける、というわけでもありません。
なんのために?
イモムシは移動するどころか、死んでしまったかのように動きません。80匹に体内を食べられているのですから、体内はかなりスカスカになっているはずですし、さすがに死んでしまったのでしょうか?というか、死んで当然です。
しかし、イモムシはどういうわけか死んでいません。その証拠に、イモムシのそばにあるブードゥー・ワスプのサナギを狙って昆虫たちが近づいてくると、機敏に反応し激しく追い払うからです。
そうなのです、ブードゥー・ワスプの幼虫はサナギから成虫になるまでの一番無防備な時期を、イモムシに用心棒をさせているのです。つまり、イモムシはいつの間にかブードゥーのゾンビと化していたのです。
イモムシは、ブードゥー・ワスプに自分の肉を提供するだけでなく、さらにかれらがサナギから孵るまで用心棒を買って出ているのです。
~ ゾンビ化のシステム ~
(すっかり人が変わってしまった凶暴イモムシ)
イモムシは結果的にサナギを守っていますが、厳密に言えば、サナギを守るというより、イモムシに近づいてきたすべての生物に攻撃を仕掛けているだけのようです。
しかし、不思議なことに、寄生されていないイモムシは温厚で、体の上にムシが乗っかってこようとも追い払う素振りさえ見せません。(1番上の画像)
寄生され、ブードゥー・ワスプのサナギの近くに陣取っているイモムシだけがこのように攻撃的な素振りを見せるといいます。
この動きを止めたイモムシは、まるで今からサナギにでもなろうとしているようです。
スカスカの体でとてもサナギになどなれるはずもありませんが、ブードゥー・ワスプの寄生により、サナギになる行動を促されているのでしょうか?
サナギになるときは無防備になりますから、イモムシはそれで凶暴化しているのかもしれません。
つまり、ブードゥー・ワスプのサナギを守るイモムシの行動は、決してサナギになることが出来ないイモムシに、「これからサナギになりますよ情報」を、ブードゥー・ワスプが流しているから、とも考えられます。
~ 着ぐるみ制御? ~
とはいえ、どうやってイモムシの行動を制御しているのか、それはまだ分かっていません。しかし、とても興味深い事実があります。
イモムシの体からぞろぞろ出てきた兄弟姉妹、しかし、その数は産み付けられた80個には遠く及びません。
もちろん、どんな昆虫であっても産み付けられた卵がすべてサナギまで育つなどということはなく、途中で死んでいくのがほとんどだからです。
しかし、ブードゥー・ワスプのサナギを守るゾンビ化したイモムシを解剖してみると、その中にはイモムシの体外に脱出せずにゾンビイモムシと運命を共にするブードゥー・ワスプの兄弟たちが何匹か見つかるのです。
そのため、命を張ってイモムシの体内にとどまるかれらこそ、イモムシの行動を制御している可能性がある、との見解があります。
いずれにしてもイモムシはこのサナギを守り続けますが、それもサナギからブードゥー・ワスプが孵るときまで。イモムシは、シャクガになることは決してありません。
ちょうど「用心棒」としての役目を終える頃、体内を食べられていることと絶食がたたり、イモムシは息を引き取ります。
その亡骸を尻目に、サナギから出てきたブードゥー・ワスプは空に向かって飛び立っていきます。
<参照サイト>
● New Scientist
<この記事のURL>
http://umafan.blog72.fc2.com/blog-entry-704.html
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いつも楽しみです
面白いです。。
寄生されたイモムシ・・ゾンビ化ですね・・
まるで「ドーンオブザデッド」です。。。
分からなかったらすみません。
じっくりバックナンバー拝見させて頂きます。
宿主の行動をここまで複雑に操る事ができる
なんて恐ろしいハチだ…
そして何より体の一部を食べられても尚、食べた相手を守り続けるなんて、イモムシの超自然的な行動が恐ろしいです…
リアルな怖さ、です。
宿主操る寄生虫…B級ホラーのワンジャンルまんまじゃ無いですか…嗚呼。
「まだ」虫で済んでて良かった?かな?
どのみち…生理的に嫌。
寄生対象が大掛かりに成りませんように(祈)。
私もコレクション語ってます。
携帯ストラップのコレクションです。
宜しくお願いいたします。
ゾンビパウダー…昔、何かの番組で作り方を軽く説明してたと思います。
乾燥させたフグと蛙とその他諸々を粉末にして靴やサンダルに仕込み足の裏から吸収させて知らぬ間に廃人にしてしまうとか…恐ろしいす!!こうみると人間も動物も何ら変わりないすね(笑)
正直うまくできているなぁと思ってしまいました
あれだけ、ズタズタにされたら何に対しても
攻撃してしまうのは仕方ないですね^^;
でも、もしかしたら寄生されている間に
ほんとに心も体も奪われてしまったのかも^^
これは……久しぶりにゾワゾワきましたね…
これが人間にとりついて…卵を産みつけたりしたら…
背中がかゆくなってきた…
ちょっと忙しくて返信してなかったら、すごく溜まってしまいました。
いつも思うんですが、寄生虫の記事を書くと、とたんにコメント欄がにぎやかに、、、気持ち悪い系は人気があるのでしょうかね?(笑)
勉強になります。