■吸虫のミラクルな旅 ~ 住血吸虫■
■Schistosoma■
~ バンブルビートル ~
(バンブルビートル)
人類滅亡後の生物進化シミュレーション、「フューチャー・イズ・ワイルド」の2億年後の世界には、バンブルビートルというじみ~な昆虫が登場します。
このバンブルビートル (bumblebeetle) という名前は、マルハナバチの英名、バンブルビー (bumblebee) をもじったものですが、特に生態が似ているわけではありません。
バンブルビートルの特徴は、グリムワーム (grimworm) と呼ばれる幼虫時代にあります。
(バンブルビートルの幼虫、グリムワーム)
グリムワームは無性生殖によって増殖し、さらに幼虫の過程であるにも関わらず、交尾 (有性生殖) も済ませてしまいます。
幼虫時代に交尾を済ませているので、サナギから孵ると同時に、成虫 (バンブルビートル) のおなかの中には幼虫 (卵胎生) がたくさんつまっています。
成虫の寿命はたったの24時間、砂漠のどこにあるともしれないエサ場まで幼虫を無事に運搬するのがかれらの唯一の役割です。
寿命が尽きる一日以内にエサ場を見つけられなければ、おなかの子供たちは親と運命を共にします。
過酷かつ、奇妙な生態を持つバンブルビートル、こんな昆虫はもちろん現代にいませんが、、、
~ 住血吸虫 ~
(住血吸虫の簡易生活史)
住血吸虫症という、住血吸虫が引き起こす大変怖い病気があります。
病気の症状については特に触れませんので、そっちのほうに興味のある方はどこかちゃんとしたサイトをご参照ください。
寄生虫の多くは、驚くべき複雑かつ運任せ的な生活史を歩みますが、この住血吸虫も例外ではありません。
この住血吸虫の不思議な生活史を見ていきます。
~ 広節裂頭条虫 ~
住血吸虫にはいくつかの種類があり、代表的なものに日本住血吸虫 (Schistosoma japonicum)、マンソン住血吸虫 (Schistosoma mansoni)、ビルハルツ住血吸虫 (Schistosoma haematobium) などがあります。
成熟した住血吸虫は人体内で寄生生活を送りますが、厄介なのは血管内に棲んでいることです。
人体内に寄生するものとしては、泣く子も黙る広節裂頭条虫 (こうせつれっとうじょうちゅう) が有名かと思います。いわゆるサナダムシです。
小腸に生活拠点を置き、最大クラスでは10メートルにもなるため、この上なくグロテスクな感じがしますが、多くの場合、症状としてはお腹を壊す程度だったり、基本的に見た目ほどの危険はないといわれています。
広節裂頭条虫の体は電車の回数券みたいな感じで、ミシン目さながらの節があります。この1枚分の回数券には広節裂頭条虫の卵がぎっしりと入っており、回数券が切り裂かれるようにちぎれて便と一緒に排泄されます。
~ 卵の脱出 ~
広節裂頭条虫のようにスムーズに卵が体外に排出されるのであれば、住血吸虫もそれほど怖くはありません。
住血吸虫は卵を5分に1個のペースで1日中、寿命3年ほどの間、ひたすら生み続けます。だいたい1日300個ですから、3年で32万個ぐらいになります。
住血吸虫の卵も広節裂頭条虫と同じく便に混じって体外に排出されるのですが、棲んでいる場所が小腸ではなく、名前の通り血管内であるため、卵を直接便に紛れ込ませることが出来ません。
そういうわけで住血吸虫の卵は血管を破って、小腸に紛れ込まなければならず、血管を裂きやすいようにトゲ付き卵になっています。
しかし、これはほとんど運任せで、小腸に紛れ込めなかった卵は血管を通してからだのあちこちに運ばれてしまします。特に肝臓などに溜まって病気を引き起こすというわけです。
住血吸虫の卵は人体の外に出ること自体が難関です。
~ タイムリミット12時間! ~
さて、ラッキーな卵は便に混じって人体からの脱出に成功します。淡水に触れると卵が割れ、自由に泳ぎ回ることができるミラキジウム (miracidium) が誕生します。
このミラキジウムは特定の巻貝に寄生しないと成長できません。水の中は敵だらけですから、急いで探すに超したことはありませんが、急ぐ理由は他にもあります。
ミラキジウムの寿命は、たったの10~12時間しかないからです。
うまく敵の目を逃れ、巻貝を探し続けることが出来たとしても、寄生できないと半日程度で死んでしまうため、かなり過酷な旅となります。
卵が人体の外に出ること自体難しい上、やっと外に出たところで、魚などに食べられても、間違った巻貝に寄生しても、半日以内に巻貝を見つけられなくてもゲームオーバー、ここまででほとんどの仲間が脱落してしまいます。
~ ボーナスステージ ~
(ケルカリア)
12時間以内に特定の巻貝を見つけることが出来るミラキジウムは、ほんの一握りでしょう。
こんな少ない数で、次のステージ、人間の寄生に成功するとは思えません。こんな生活史を歩んでいるのであれば、とっくに絶滅しているはずなのですが、いまだに健在です。
これには理由があります。巻き貝まで辿り着いたミラキジウムにはご褒美があるからです。
巻貝に辿り着いたミラキジウムは、スポロキスト (or スポロシスト, sporocyst) となり、フューチャー・イズ・ワイルドのグリムワームのように、親でもないのに無性生殖により一気に数を増やすことが出来ます。
このスポロキストから生まれてくるのは、泳ぐのに便利な二股の尻尾を持つケルカリア (or セルカリア, cercaria) というもので、毎日1000~1500匹が巻貝から旅立ちます。
~ タイムリミット24時間! ~
(住血吸虫のオスとメスの成体。細いのがオス)
成熟したケルカリアたちは巻貝を離れ、人間捜しの旅に出かけます。
が、またも難関です。寄生する対象が水生生物の巻貝ならともかく今度は人間です。
人間はふだん水中では暮らしていません、つまり水生生物でない人間に寄生しなければいけないわけで、巻貝を見つけるときよりさらに困難です。
そんなケルカリアの苦悩を知ってでしょうか、神様は「ミラキジウムが巻貝を見つけるときの倍の時間」をケルカリアに授けました。って、たったの24時間ですが。
ちなみに、寄生された巻貝は寿命が短縮されますが、その寿命を全うする間に30~50万匹のケルカリアを生産します。
この数十万にも及ぶケルカリアたちは、自分たちの住む水中に人間が運良く入ってくるのをひたすら待ち続けます。
寿命はわずかに24時間、そのほとんどは人間に寄生することなく息絶えることでしょう。
しかし、水辺に足を踏み込んだ人間を見つけるや、皮膚を破り人体内に侵入し、寄生生活を始めます。
成長したオスとメスは、擬人的表現を借りれば、一生仲むつまじく寄り添って、人間の血管内で卵を産み続けます。
<この記事のURL>
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あのような生き物がどのようにしてでてきたのか非常に気になります。
しかし寄生生物って妙にドラマチックな一生を送るのが多いですね。それだけの危険を冒す価値が寄生生活にはあるってことなんでしょうか
寄生虫に限らず、寄生蜂とかもびっくりするぐらい複雑な生活史を営んでいますから、こればかりが凄いわけではないんですけどね。
病気を引き起こすことではニンゲンにとって最悪の生き物ですが、その生活史はとても興味深いと思っています。
三国志が題材の漫画なんですが、赤壁のとき魏軍で疫病が広まるっていう話がありまして、そのときの病の原因が住血吸虫でした。(結構細かく病状や感染経路の説明も書いてありますよ)
あくまで仮説のフィクションでしたけど、それ以来怖い生物だなぁと思ってました
細長い雌虫を包み込むように抱っこしている雄虫ですが、環境が悪くなるといとも簡単に放り出しちゃいます。こんなきれいな標本をたくさん作りたくて苦労しています。