■ヘリコプリオン■
■Helicoprion■
(リチャード・エリス、「アクアジェネシス」より)
~ サメの歯 ~
サメの歯はベルトコンベア式に次々と生え替わることで知られています。
外側から見えている最前列の歯の後ろ側に、幾重にも歯が待機しています。
基本的に、サメの歯は横1列 (歯列) で1セットですから、まだまだ使える立派な歯がたくさん並んでいても、歯列ごと最前列の歯は後ろに待機している歯列とごっそり交換されてしまいます。
サメによって生え替わる歯の数は大きく異なりますが、多いものでは一生の間に数千から数万本生え替わるものと推測されています。
人間などからすればずいぶんとうらやましいシステムです。しかし、使える歯まで廃棄されてしまうとは、非常にもったいなく感じます。
この抜け落ちてしまう歯を、なんとか有効利用していたと思われるサメの仲間が存在します。
~ 螺旋状のノコギリ ~
抜け落ちる歯を抜け落ちないようにしようとしたサメはいくつか知られていますが、その中でもっとも有名と思われるヘリコプリオンを紹介します。
ヘリコプリオンは石炭紀後期からペルム紀まで繁栄した古代のサメで、その化石はロシアを始め、アメリカやオーストラリア、そして日本でも発見されています。
体長は3メートルから大きいもので6メートルぐらいと推測されており、なかなか大きなサメです。
(ゴブリンシャークのスライドショー
※ 画像をクリックするとYouTubeに飛びます)
体型的にはゴブリンシャーク (ミツクリザメ) のように吻 (ふん、鼻先) の長い体型だったといわれています。
多くの軟骨魚類がそうであるように、軟骨は石化しにくいため、ヘリコプリオンは歯の化石しか残っていませんが、この歯の化石の不思議さといったらありません。
このヘリコプリオン (Helicoprion) という名前は、"Helico" が「螺旋 (らせん)」、"prion" が「ノコギリ (saw)」という意味で、「螺旋状のノコギリ」とか「円形状ノコギリ (Circular saw)」という意味になります。
この「螺旋状のノコギリ」というのは、もちろんヘリコプリオンの歯を指しています。とはいっても「螺旋状のノコギリの歯」といわれてもピンと来ません。どういうことでしょう?
~ ヘリコプリオンの歯 ~
ヘリコプリオンの歯列は抜け落ちません。しかし、他のサメの仲間と同様、歯は生涯生え続けます。
「歯が抜けない」にも関わらず「新しい歯がどんどん生えてくる」、ふつうに考えれば、ヘリコプリオンの口の中は、歯でいっぱいになってしまうはずです。
しかし、ヘリコプリオンの口の中は、歯でいっぱいになることはありません。抜け落ちるべき歯列が、抜け落ちずに螺旋状に巻いていくのです。
ヘリコプリオンの歯の化石を見れば一目瞭然、まさに「螺旋状のノコギリ」です。
というか、特に化石に興味のない人がヘリコプリオンの化石を見た場合、とうていサメの歯と認識するとは思えず、おそらくイガイガのアンモナイトの化石と思ってしまうことでしょう。
~ 歯の付き方 ~
(ヘリコプリオンの歯の化石)
さて、このぐるぐる巻きの歯、いったいどういう風にからだにくっついていたのでしょう?
実は未だにはっきりしていません。おそらく下あごのものと考えられていますが、頭部の化石もまだ発見されておらず、確定されていません。
以前は、むしろ上あごについていたのではないか、という考えのほうが主流だったようです。
ロシアの地質学者ウラジミル・オブルチェフ (Vladimir Obruchev) は、このぐるぐる巻きの歯が下あごについていては摂食の邪魔になったと考え、上あごについていたものと推測しました。
ウラジミルは、上あごについていた場合の利点として、頭部を保護する緩衝材としての役割を挙げています。
しかし、近縁種などの発見等、研究の進んだ現在では下あごについていた、という考えが主流であり、復元図や復元模型もほとんどがそのようになっています。
(ヘリコプリオンの復元の一例)
川崎悟司さんの復元イラストもどうぞ
カメレオンの舌のように伸びて獲物を攻撃したのではないか、口の中にアンモナイトがいるように見えるので、疑似餌としての役割を担っていたのではないか、など珍説もたくさんあります。
ただし、体が大柄だったことを考えると、そのような小細工をするより、ふつうに獲物に襲いかかった方が楽なような気がします。
本当のところは現時点では分かりませんが、こんな不思議なサメが存在していたことだけは疑いようがありません。
廃棄される運命にある歯を再利用するという画期的な進化を遂げたヘリコプリオン、長く繁栄したにもかかわらず、現在の海にかれらのアイデアを採用したサメは存在しません。
(参考文献 "AQUAGENESIS", Richard Ellis)
<この記事のURL>
http://umafan.blog72.fc2.com/blog-entry-644.html
↓気に入って頂いた方はクリックして頂けると嬉しいです
人気 blog ランキング でオカルト・ホラーサイトを探す
>> FC2 ブログランキング (オカルト・ホラー)
>> 面白サイトランキング
(関連)
■ 絶滅生物リスト
■ 巨大生物リスト
■ 存在したのか?超巨大鮫パラヘリコプリオン
■ 巨大鮫 ~ メガロドン
■ 巨大鮫 ~ カグラザメ
■ 巨大鮫 ~ オンデンザメ
■ 巨大鮫 ~ ゴブリンシャーク
■ ヘラチョウザメ
■ 絶滅巨大魚 ~ ダンクレオステウス
■ 絶滅巨大魚 ~ リードシクティス
■ 絶滅巨大魚 ~ シファクティヌス
■ 絶滅巨大魚 ~ ハイネリア
■ 生きた化石 ~ ラブカ
■ 生きた化石 ~ シーラカンス
■ 巨大魚 ~ ゴリアテ・グルーパー
■ 巨大魚 ~ ナイルパーチ
■ 巨大魚 ~ アリゲーターガー
■ 巨大魚 ~ ターポン
■ 超巨大リュウグウノツカイ
■ 深海の奇妙なギンザメ ~ テングギンザメ
■ 3メートルの巨大カレイ ~ オヒョウ
■ 巨大ナマズ ~ ヨーロッパオオナマズ
■ 巨大ナマズ ~ メコンオオナマズ
■ 巨大ナマズ ~ ピライーバ
■ 足のある鮫が捕獲される
■ 新種のサメ ~ゴジラ・シャークの化石発掘
■ 水棲UMAの誤認候補 ~ チョウザメ
■ 古代のダイオウイカ Part2 トゥソテウティス・ロンガ
UMA一覧へ
トップページへ
サメ好きの私ですが最初にこいつの姿を知った時は衝撃的でした・・・。
「じゃ・・邪魔じゃない?」が第一印象
ゴブリンといい、ラブカといい、サメって本当に魅力的・・・。
あ~こいつらが本当に生きてた時代に行ってみたい~
とっくに絶滅しているんですが、メガマウスのように深海にヘリコプリオンの近縁種が生き残っており、いまだに発見されていない、、、というUMA的期待を抱いています。
>あ~こいつらが本当に生きてた時代に行ってみたい~
すぐ食べられちゃうと思います。
川崎さんの名前、変換ミスしておりました。失礼しました&王里さん、サンキューです。
あまり読み直さないので、誤字とかあると当分気づかない可能性がありますから、すごく助かりましたよ!どうもですっ!
ご飯の時は不便じゃないの?みたいに。
背びれ部分にへんてこなのがついている絶滅種の鮫も多いですから、背中の可能性もなくはないかもしれません。
学名が付けられているからには、何例か発見されており、病気などによる変形ではないのでしょうが、どう考えても機能的とは思えないこの歯をどのように使っていたのか、興味は尽きません。
ところで以前、石の中の魚の話題が出ていましたが、本日の「なんでも鑑定団」で、実際に中に水が封じ込められた石が鑑定に出されていました。それによると地下の温泉がある場所で岩石が形成される時、水が中に取り残されてしまうことがあるそうです。
普通、魚石の伝説は、魚の化石の話が伝聞で変化したとされているのですが、こういった水入りの石の話も混じっていたのかもしれません。
伝説では、少しずつ磨いて中の魚が透けるようにして鑑賞すれば寿命が延びる効果があると言われているのですが、「鑑定団」で出されていた石はメノウで、確かに磨くと透けますし、この点でもけっこう可能性がありそうです。
犬にもたまに見られるが、奇形で生まれて化石で残った、魚介類の場合、ご飯は卵から孵ると自分でご飯を捕えて食べる事で哺乳類より生存率が上がる。
母親からミルクをもらっているわけでもない
こういったことはたまに見られる
なので、こういった種が長く繁栄していたことは確かなようです。
あ、あと石の水の話、ありがとうございます。本当に存在するんですね、そうなると、水が出てくるぐらいだから、一緒に魚も出てきた、なんて話が出来上がる可能性はありますよね。
あの蛙の話も同系列ですかね?w
なるほど、これは>カメレオンの舌のように伸びて獲物を攻撃したのではないかという説) から来た進化予測なんですね。
まぁドラマでは舌だけど。