■謎の大絶滅 ロッキートビバッタ■
■Rocky Mountain locust■
(サバクトビバッタの飛蝗)
~ クリスマス島の赤ガニ ~
(クリスマス島の赤ガニの動画 その1
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インド洋にに浮かぶオーストラリア領の小さな島、クリスマス島にはおびただしい数の赤ガニ (Gecarcoidea natalis) が大発生することが知られています。
10億匹以上といわれるこの赤ガニですが、母ガニのお腹にいる小さな子ガニたちを含めると、その数は75兆匹だとかいう噂も。
ピーク時のクリスマス島はどこもかしこも赤ガニだらけになり、道路もまるでレッドカーペットのように赤ガニで埋め尽くされてしまいます。
(赤いところは全部カニです
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75兆匹という数は大げさにしても、あんな小さな島に12億匹というカニが発生するのですから驚きです。
しかし、このクリスマス島の赤ガニさえ軽く凌駕する生物といえばやはりバッタをおいてありません。
~ 飛蝗 (ひこう) ~
(コンゴで撮影されたバッタの大群の動画
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バッタの大群はよくニュースになるので、みなさんもご存じかと思いますが、あの大群を成すバッタを、そして大群を成すことを飛蝗 (ひこう) といいます。
この大群を形成するバッタは、トビバッタとかワタリバッタとかいわれますが、日本でもおなじみのトノサマバッタもこの仲間です。
大群を形成するバッタの仲間は、低密度で育つと孤独相 (こどくそう)、高密度下で育つと群生相 (ぐんせいそう) 呼ばれる成虫になります。
孤独相から群生相に一代で変化することは出来ず、数世代を経て群生相のバッタになります。この孤独相から群生相に変わる中間のバッタを中間相といいます。
そのへんで見かける日本にいる緑色のトノサマバッタは孤独相のものですが、高密度環境で育てばちゃんと群生相に育ちます。
これは幼虫の糞に含まれる揮発性のフェロモン (ローカストール, locustol) が影響しているといわれます。
高密度で棲息する幼虫の場合、空気中に放出されるフェロモンも多くなりますから、空気中に含まれるフェロモンの濃度が高くなります。
フェロモンは空気中に高濃度に溶け込んでいますから、呼吸の際に体内に取り込まれ易くなります。このフェロモンを気門 (昆虫の呼吸器官) から体内に取り込んだ際に相変異 (群生相) を促すというわけです。
ただし、一代で完全な群生相のバッタが完成するわけではなく、高密度下のバッタが数世代経て、完全な群生相のバッタが誕生します。
群生相として育つと、体色は黒っぽくなり、飛ぶのがメインのためトレードマークの大きな後ろ脚は短く、そして羽根は相対的に大きなものになります。
つまり、体に対して羽根が大きくなるので、非常に飛ぶのに適した体型となります。
孤独相と群生相のバッタは、同じバッタとは思えないほど見かけが異なりますが、見かけだけでなく体の内部構造まで大きく異なります。
(群生相のバッタの大群
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~ 群生相の幼虫と成虫 ~
群生相から生まれる卵は数が少なく、その代わり大きいという特徴があります。
生まれてくる幼虫ももちろん大きく、最初から脂肪をたくさん蓄えているため飢餓にも強いというわけです。
また、幼虫共々、群生相のバッタは黒っぽい色をしていますが、体が黒いことにより輻射熱 (ふくしゃねつ) の吸収が増し、より代謝を活発するのに役立ちます。
代謝が活発ということは成長が早いということで、より短期間に成虫になることが出来ます。
さらに一部のトビバッタは、齢数もひとつ少なく成虫になることが出来るものも存在し、いずれにしても成虫までの期間を短縮する工夫が成されています。
こういったこともあり、群生相の親から生まれたバッタは著しく死亡率が下がり、成虫になる確率は20%ぐらいに跳ね上がります (孤独相は2%未満)。
このような相乗効果により、バッタの群れは短期間で恐ろしい数に膨れあがることが出来ます。
~ アメリカのトビバッタ ~
バッタの大群というとアフリカ大陸で発生するイメージがありますが、そんなことはまったくなく世界中、いたるところで発生しています。
日本などでもときどき飛蝗が発生しますが、やはりアフリカで発生するものの規模は半端ではありません。
東アフリカでは、ひとつの群れだけで1120億匹と見積もられたサバクトビバッタの飛蝗もあるほどです。
そんな驚異的な数にふくれあがるバッタですが、その中でももっとも巨大な大群を形成したのは、ロッキートビバッタであったといいます。
ロッキートビバッタは北米に棲息していたトビバッタで、1874年に発生した、このロッキートビバッタの大群は、12兆匹というまさに天文学的数字にふくれあがった記録があります。
大群はいずれ収束し、何世代か経てまた大量発生を繰り返しますが、ロッキートビバッタの場合、収束するどころかこの記録的な大発生からわずか30年後に絶滅してしまいました。
12,000,000,000,000匹いたのがわずか30年後には0匹、ロッキートビバッタの絶滅はおそらく農耕による土地の開発が引き金になったものと考えられていますが、気候なども含め複合的な要因によるものでしょう。
しかし、人間の活動がもっとも影響しているのは疑いようがありません。
ロッキートビバッタの絶滅は、自然に生きる生き物たちにとって人間がいかに脅威的な存在かを示す顕著な例といえるでしょう。
(参考文献)
「動物たちの生き残り戦略」
<この記事のURL>
http://umafan.blog72.fc2.com/blog-entry-637.html
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