■フクロムシ■
■Sacculina■
~ カニにくっつくフジツボの仲間 ~
一部の寄生虫ファンの方にマニアックな人気のあるフクロムシを紹介します。
フクロムシはその名前の通り、袋状の体が特徴の寄生生物で、基本的にフクロムシとして目にするのはメスだけです。「フクロムシ」なんてかわらしい名前をつけてもらっていますが、そこはやはり寄生虫、やってることはモンスター級です。
袋状のムシ、というか袋そのものになってしまった成体の見かけからは想像できませんが、流木など浮遊物やクジラとかカメの頭に多数ひっついているフジツボの仲間です。フクロムシはカニやエビ、それから自らと同じ仲間であるフジツボなど、甲殻類に寄生する甲殻類です。
特にカニに寄生するものが有名で、カニの怖~いハサミの届くおなかに堂々とくっついています。
どうせ寄生するならハサミの届きにくい背中の方がいいような気がしますが、フクロムシがカニのおなかに鎮座できる、というか背中ではなくおなかにくっつきたいのには理由があります。
というのも、カニはフクロムシを自分の卵だと思って守ってくれるから、背中ではなくおなかにくっついていた方が安全なのです。
そういうわけで、フクロムシは自らの卵を守る習性のあるメスのカニにのみ寄生するということになりますが、そうでないのが不思議なところです。
~ フクロムシの寄生 ~
さて、どうやってカニに寄生するのでしょう。
あの袋のようなものがゆらゆら泳いで来てカニのおなかにぺたりと張り付くのでしょうか?それともイモムシのように這い、さりげなくカニのおなかにくっつくのでしょうか?
どちらにしてもそれではカニはバカすぎます。さすがに外から卵がやってくるわけがないので、カニだって気付くでしょう。
フクロムシはフジツボの仲間といいましたが、フジツボの仲間は固着生活に入る前は自由に泳ぎ回ることが出来る幼生 (プランクトン)、ノープリウス幼生、キプリス幼生のステージを過ごします。
フクロムシも同様にこのステージを通って大人になりますが、フジツボがキプリス幼生から岩や流木、またクジラとかカメとかの頭部にくっついて固着生活に入る代わりに、フクロムシの幼生はカニの体内に侵入します。
体内に進入したフクロムシは、植物の根を思わせる細い枝状の器官をカニの全身に張り巡らし、そこから栄養分を頂戴しながら、体外、つまりカニのおなか付近にあの袋状の外套 (がいとう) を発達させます。
~ カニのゾンビ化 ~
レウコクロリディウム に寄生されたカタツムリ (オカモノアラガイ) は自ら鳥に食べられるような奇異な行動をします。抜け殻のようになったその姿はまさに生きる屍、ゾンビといった感じですが、フクロムシに寄生されたカニもある意味ゾンビ化します。
栄養分を取られているだけでもかなり迷惑ですが、さらに、フクロムシに寄生されたカニはホルモンバランスを崩され、生殖機能を失ってしまいます。 つまりフクロムシに寄生されたカニは自らの子孫を残すことは出来ず、ただフクロムシを育てるためだけに生かされているといえます。
メスの場合、フクロムシの外套を自分の卵だと思って大事に育ててくれますが、問題はオスのカニです。
フクロムシはカニの雌雄を判断し、メスにのみ寄生する、というのであれば問題ありませんが、残念ながら関係なく雄のカニにも寄生します。そして卵を作らないオスのカニでも同じことを始めます。
オスですから自分が卵を産むはずがありませんし、おなかにカニの卵風のものを発達させたところで、こんなもんいらんと、ちぎって捨てられてしまいそうです。が、そうはなりません。
フクロムシに寄生されたオスは、脱皮を繰り返すごとにメスのようにハサミが小さくなり、腹部が広がっていきます。見た目も振る舞いもメスのように、つまりメス化していきます。このような現象を寄生去勢 (きせいきょせい) といいます。 オスのカニもメスと同様、自分の卵のように大事に育てようとします。
また、フクロムシに寄生されて栄養を抜かれているのですから、カニの寿命は短くなりそうな気がします。ところが、繁殖能力を奪われているため、繁殖に使うエネルギーロスを抑えてしまうため逆に長生きするようです。
ただし、やはり栄養を抜かれている影響でしょうか、自切 (襲われたときに足を切って逃げること) した場合、再度足が生えてくることはないともいいます。
子孫は残せないは、自切したら足が生えてこないは、カニにとってはさんざんなカニ人生を送ることになります。
~ 子供産みマシーン ~
フクロムシは雌雄同体ではなく、オスとメスの区別があります。しかし、あの目に見えるフクロムシはすべてメスの体の一部で、オスは受精のためメスに同化し、その生涯を終えます。
さて、カニのおなかに見えている袋状の外套が、あの中はほとんど卵巣で占められており、まさに子孫を残すために特化した体となっています。
自分の栄養を奪い、次世代のフクロムシを着々と育てている憎きフクロムシを、カニは我が子のように大事に大事に命の続く限り守り続けます。
(参考文献・参考サイト)
■ 魚介類に寄生する生物 (長澤 和也 著)
■ Christian Brothers University さん
■ モズクガニのフクロムシのホームページ さん
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