■タスマニア・タイガー (サイラシン)■
■Thylacine■
~ トラのような有袋類? ~
今回は悲劇の動物、タスマニア・タイガー (フクロオオカミ)です。
英名を "Thylacine" (サイラシン) 、学名は「オオカミの頭部を持つ有袋類」という意味の "Thylacinus cynocephalus" といいます。
背中の中央付近から尾にかけて、トラのような縦縞模様があるため、タスマニア・タイガーと呼ばれることが多いですが、模様をのぞけば英名・学名通りオオカミに大変よく似ています。
しかし、タスマニア・タイガーはトラでもなければオオカミでもなく、カンガルーやコアラなどと同じ有袋類の仲間です。
(タスマニアタイガーの動画
※ 画像をクリックするとYouTubeに飛びます)
名前からも分かるとおり、タスマニア・タイガーはタスマニア島に棲息していましたが、以前はオーストラリア大陸にも広く分布していました。
オーストラリア大陸に棲息していたタスマニア・タイガーは、人類と共にこの大陸に進入した犬、ディンゴとの生存競争に敗れ3000年ほど前に絶滅してしまいました。
一方、この動物の和名にも使われているタスマニアには、20世紀以降まで棲息していました。
~ 大殺戮 ~
(殺されたタスマニアタイガー)
オーストラリアに移住してきたヨーロッパ人たちは、オーストラリアの野生動物を数え切れないほど殺戮 (さつりく) したことは有名です。
あろうことか殺戮を奨励する動物学者さえいました。著名な鳥類学者であり、鳥類をはじめとする非常に優れた図版を多数残したジョン・グールドです。
彼は、オーストラリアの野生動物すべてが移民たちにとって有害である、という見解に立っていました。
グールドはカンガルーやバンディクート、タスマニアデビルをはじめ多くの野生動物を殺しましたが、中でももっとも忌み嫌ったのはタスマニアタイガーでした。
(小熊に似た有袋類、タスマニアデビル
基本的にスカベンジャー (腐食動物)であるにも関わらず、
恐怖を感じさせる大きな鳴き声は移民たちの反感を買います)
グールドはタスマニアタイガーを移民たち最大の敵として撲滅を訴えました。タスマニア・タイガーは移民たちの生活を脅かす家畜殺しである、と。
グールド亡きあと、グールドが太鼓判を押した害獣たち、すなわちタスマニア・タイガーやタスマニアデビル、カンガルーには懸賞金がかけられ、毎日のように虐殺が行われました。
虐殺の方法は動物の水飲み場に青酸カリを混ぜたり、群れに向かって無差別の機関銃射撃を行ったりと、それはそれは凄惨 (せいさん) なものだったといいます。
タスマニアタイガーをはじめ一部のものには懸賞金がかけられたことも殺戮を助長する原因となりました。しかし、懸賞金をかけられた野生動物だけが犠牲になったわけではありません、ありとあらゆる野生動物が標的とされました。
1906年、わずか1年だけで人類にはまったく無害と思われるカンガルー25万頭、コアラ20万頭、クスクスが300万頭も殺されたといいます。
命あふれるオーストラリア大陸は、人類の進入により未曾有の殺戮大陸と化しました。
~ 家畜殺しのレッテル ~
(大きくさけた口は移民たちに恐怖を植え付けました)
この殺戮ショーは、もちろんグールドだけの責任ではありません。グールドの言葉がなくても、おそらくこの未曾有の殺戮は続けられていたでしょう。
移民たちの中にも、心を痛めた自然愛好家は存在しましたし、国外からも非難が寄せられましたが、多くの移民たちはそれに耳を貸そうとはしませんでした。
話をタスマニアタイガーに戻しましょう。
グールドが言ったように、タスマニアタイガーは本当に家畜殺しの危険な動物だったのでしょうか?
ときには家畜を襲うこともあったでしょう。しかし、家畜殺しの真犯人は、何を隠そう、移民自らがオーストラリアに持ち込んだ犬が野生化したもの、つまり野犬だったといいます。
しかし、耳元まで大きく裂けた口、トラを彷彿させるストライプ模様、どう猛な肉食動物を連想させるその姿に、移民たちは容赦しませんでした。
野犬には目もくれず、タスマニア・タイガーを徹底的に憎み、絶滅寸前と分かっても、虐殺を続けました。
~ タスマニア・タイガーの絶滅 ~
グールドの死後、かれのオーストラリアの野生動物がすべて有害である、という言葉は、まったく間違っていたことがほかの動物学者たちにより証明されました。
しかし、気付くのにはあまりに遅すぎたようです。多くの野生動物たちが、ほんの数十年の間に姿を消してしまいました。
タスマニアタイガーは?
徹底的に憎まれたあのストライプ模様の動物は、ほかの動物が姿を消していく中でしぶとく生き残っていました。
オーストラリア生態系の中で食物連鎖の頂点に君臨していたタスマニアタイガーです、元々の数も決して多くはありませんし、繁殖力もそれほど高くはありません。
こういった動物は一度数を減らすと保護をしてもなかなか数が戻らないものです。
しかも、こんな状態になりながらも完全な保護を受けていたわけではありません。彼らが地球上から姿を消すのも時間の問題となってきました。
タスマニアタイガーの最後の捕獲記録は1933年のことです。
そのころ、あれほど憎んでいたストライプ模様の動物は、もう自然界ではまったく見られない珍獣となっていました。
このときとらえられたタスマニアタイガーは動物園に移され、仲間たちを殺した人間の好奇の目にさらされることになります。
動物園で人目にさらされて3年後の1936年、最後のタスマニアタイガーも息を引き取り、地球上から姿を消してしまいました。
~ タスマニアタイガーの目撃 ~
(タスマニアタイガーのものと思われる足跡)
人類のこういった過去の残虐行為を忘れたいためでしょうか、絶滅した1936年以降、タスマニアタイガーの目撃が毎年のように続いています。
タスマニア島は決して大きな島ではありませんが、現在でも人跡未踏の岩山や森林が多く残されています。
人類に追われたタスマニアタイガーが、この地帯に逃げ込んで細々と生き残っているのでは?と淡い期待を寄せられていますが、もし生き残っていたとしても、過去の残虐行為が帳消しになるわけではありません。
<参考文献>
●世界動物発見史 (H. ヴェント)
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