■クマムシ■
■Water bear■
~ 伝説崩れる!? ~
(海外でもクマムシ伝説は健在です
※ 画像をクリックするとYouTubeに飛びます)
~ クマムシとは? ~
もっとも生命力の強い生物として「クマムシ」という名前をよく目にします。
クマムシは数十年前から生命力が強い生物として本にはよく載っていたのですが、一般的にメジャーになってきたのはつい最近です。
おそらく、早川いくをさんの「へんないきもの」の影響が強いものと思われますが、食玩ブームにのって、ついにクマムシがフィギュア化されるなど知名度もうなぎ登りです。
ただし、ちょっと誤解されている面があるようですので、今日はこのクマムシを見ていきます。
(まさかのフィギュア化。 「へんないきもの」の食玩として発売。
できはイマイチ!)
さて、カブトムシやクワガタムシはよく目にしますが、クマムシを目にした、なんて話は聞きません。
それもそのはず、クマムシは全世界に350種類ほどいるといわれていますが、そのほとんどは体長が1ミリにも満たない顕微鏡サイズのとてもとても小さな生きものだからです。
緩歩動物門 (かんぽどうぶつもん) という、独自の門に属した生物で、「クマムシ」の名前の通り、4対8本の太い足でクマのようにノソノソと歩きます。
~ クマムシ伝説 ~
よく目にする「クマムシの不死身伝説」はこのようなものです。
ほぼ絶対零度 (マイナス273度) の低温から、150度の高温、人間の致死量の千倍以上に当たる放射線 (57万レントゲン)、そして真空状態にさらされても生きている。
また、クマムシをもっとも有名にしたのが120年もの長期間眠って過ごすことが出来る、といったものです。
これを聞けば、「クマムシは不死身なのでは?」と誤解してしまいそうですが、決してそんなことはなく、踏んづければペシャンコになっちゃいますし、火にくべれば真っ黒焦げです。
それだけではなく、生身のクマムシを上記の絶対零度や高温下にさらせば、たちまち死んでしまいます。
クマムシが上記のような極限環境で耐えうるには、クリプトビオシス (クリプトバイオーシス, cryptobiosis) という状態になっていることが大前提です。
クリプトビオシスがどのようなものか見ていきましょう。
(通常状態のクマムシ
この状態では、か弱い生物です)
~ クリプトビオシス ~
クリプトビオシスとは、環境がクマムシの生存に適さない状態 (乾燥状態) に陥ったときに、クリプトビオシスという摩訶不思議な状態になります。
このクリプトビオシスというのは、見た目以上にとても不思議なもので、「生きている」とはいえない状態です。
以前は、クリプトビオシス状態のクマムシであっても微量ながら新陳代謝を行っているものと考えられていました。
というのも、クリプトビオシスを密閉状態で保存した容器の酸素量が、わずかに減少していたからです。
おそらくクリプトビオシス状態のクマムシは、極端に新陳代謝を下げることにより、生命活動を続けているものと考えられました。
しかしこれは間違っていることが判明しました。酸素の減少は、クリプトビオシスが呼吸をしていたからではなく、クリプトビオシスが「物質」として「酸化」していただけだったのです。
つまりクリプトビオシスはまったく呼吸していません。微量の新陳代謝も行っていません。
生命活動が完全に停止しているわけですから、これは「生きている」とはいえない状態ですし、かといって「死んでいる」わけでもありません、環境さえ整えば再び生命活動を始めるのですから。
~ トランスフォーム ~
この状態になると、通常状態のクマムシでは決して耐えうることが出来ない過酷な環境を長い期間にわたって耐えることが可能となります。
クマムシはクリプトビオシスになるとき、樽状 (たるじょう) に丸くなります。しかしこれは非常に時間のかかる作業で、平和に散歩中のクマムシに放射線を当てたり、極低温にさらしたりすると、樽状になる (クリプトビオシスになる) 暇がないため、そのまま死んでしまいます。
ちなみに、クリプトビオシスはクマムシだけの専売特許ではなく、ワムシやセンチュウ (線虫) などもこの能力を持っている生物として知られています 。
~ 120年の眠り ~
「博物館で120年間保存されていた苔 (こけ) の標本に水を与えたところ、乾燥した苔と共に (偶然に) 保存されていたクマムシ (クリプトビオシス) が直ちに生命活動を開始した。クマムシは数分動き回ったものの、その後すぐに死んでしまった」
クマムシを一躍有名にしたのが、この「120年の眠り」でしょう。書き方こそ文献によって違いは見られますが、だいたい上記のような感じです。
これが本当であれば、クマムシが不死身であるという形容は決して大げさではないといえます。
ただし、気になる点があります。
この120年の眠り伝説は明らかに1つの事例なのですが、水をかけた後のクマムシの動きが書物によってバラバラ、からだが動いた、歩いた、活動時間も数分、一瞬、などなど。
これから導き出される結論はひとつ、書き手によって脚色されているということです。
では実際はどうなのでしょうか?このクマムシの復活レポートの原文によると、
「博物館で120年保存されていた苔の断片を湿らせたところ、苔に含まれていたクマムシのクリプトビオシスの足が、水分を与えた数日後に動いたように見えた」
というものです。歩いたなどというのはまったくデタラメだったようで、そもそもクリプトビオシスから復活したかどうかも大変怪しいところです。
クマムシファンをガッカリさせてしまうような事実ですが、そんなことはありません。クリプトビオシスがとんでもない耐性を備えている事実は変わりありません。120年という事実だけが誇張されていただけです。
実際のところ、クマムシのクリプトビオシスが耐えうる年数は数年程度といわれています。
数年かぁ~たいしたことないなぁ~、なんて思う人もいるかもしれませんが、クマムシの寿命を考えると、これはタイプスリップに等しいすごいことなのです。
~ タイムスリップ ~
クリプトビオシスにならずに活動状態のクマムシの寿命は3ヶ月から半年ほどです。
これを人間に置き換えてみましょう。
仮にクマムシの寿命を半年とすると、その半年は人間の平均寿命に換算して80年に相当します。
クリプトビオシスの耐えうる年数を仮に10年とすると、寿命の20倍となります。
人間で言うと、80(年)×20(倍)=1600(年) と言い換えることが出来ます。
つまり、10年の眠りから目覚めたクマムシは、人間であれば1600年後の世界にタイムスリップしたことになります。
もちろん、この表現は言葉の文 (あや) ですが、クマムシが未来へタイムスリップ出来るという表現は決して大げさなものではないでしょう。
伝説のみが一人歩きしていますが、クマムシが驚異的な生命力を秘めていることに疑いの余地はありません。
~ クリプトビオシスの意味 (おまけ) ~
ところで、未確認動物学のことを英語で、"Cryptozoology (クリプトゾウオロジー)" といいますが、この先頭の "Crypt" の部分は、"Cryptobiosis (クリプトビオシス)" の "Crypt" と同じ意味です。
"crypt" とは、ギリシア語の "Krypt" から派生した言葉で、「隠された」とか「秘密の」という意味です。biosis は「生命」という意味ですから、Cryptobiosis は「隠された生命」という意味になります。
一方、Cryptozoology の "zoology" は「動物学」という意味ですから、「隠された動物学」、つまり日本語で一般的にいう「未確認動物学」になるというわけです。希に「神秘動物学」などとも呼ばれますが、これも間違いではありません。
さて、このことからも分かるとおり、Cryptobiosis (クリプトビオシス) という言葉は、「仮死状態」の神秘的な意味合いを含む表現となっています。
(参考文献) 「クマムシ?! 小さな怪物」 鈴木忠著
「極限の生物たち」 太田次郎著 (絶版) 「へんな虫はすごい虫 もう“虫けら”とは呼ばせない!」 安富和夫
<この記事のURL>
http://umafan.blog72.fc2.com/blog-entry-506.html
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SPAMは落ち着いたのでしょうか?
クマムシが120年間眠っていられるってきちんと実証されてなかったんですね。
クリプトビオシス状態になるのに時間がかかるのも知りませんでした。
どことなく細菌の芽胞と共通点が多そうですね。
クマムシの120年~ は、どの本を見ても書き方が同じなので、んー、おかしいなー と以前から思っていたのですが、やはりひとつの論文から伝言ゲーム状態だったようですね。
でもそれを調べた「クマムシ?! 小さな怪物」 の鈴木さんは本当に偉い (大変だった) と思います。
今度、自分でクマムシを撮影できたら再度登場させようと思ってます。
さて、クマムシほどではありませんが、身近な生物ユスリカの幼虫も結構な不死身っぷりが知られていますね。
以前NHKの科学番組で見たのですが、乾燥して仮死状態になると、かなりの高温や低温にさらしても復活するとか。なんでも体内に特殊な糖(トレハロース)?が形成され、それによって細胞が保護されるそうです。
最近ではそれを応用して乾燥野菜などをみずみずしく再生する方法も開発されているとかで、生物の生命力はまだまだ奥深いと思いました。
少し前からこちら様にROMらせて頂いていました。m(_ _)m
リードシクティスの情報を探していたらこちら様と遭遇しました。巨大生物に興味がありますが、ちっこいのも面白いですね。
以前、仮死クマムシ120年生息伝説を知り、「ありえん(°□°;)」とびっくりした事がありますが、巷で聞くその話はかなり誇張されていたのですか。
「水をやったら数日後に足が動いたみたい」というのは、もしかしたら、乾燥した削節に湿り気を与えたらクネクネするのと同じ現象だったりしませんかね?(笑)
SPMAは落ち着いたかな~?ま、定期的に攻撃されるので、そのうちまた来ると思いますけど、いったんいいかもしれません。
そうそう、ユスリカのタマゴも凄いんですよね。本の付録にもなってましたしね。シーモンキーとかアフリカのメダカとか、乾燥時に耐える生き物が結構いますが、素晴らしい耐久力です。
「クマムシ?! 小さな怪物」で、その誇張を知ったのですが、その動きに関してレポートを書いた人は、水による動きとは異なる、という表現をしていた感じでした。
以前に読んだ本で、家にも本がないので詳しく書けませんが、一応、水によるものではない可能性がある、見たいな感じでしたが、少なくとも歩き回ったりしたわけでないことは確かです。
僕も水によるクネクネかと思ってましたよ(笑)
考えみれば、削節クネクネは湿り気を与えた直後に起きて時間が経ったら湿り気が拡大してペッタリになりますが、クマムシ120年物は水をかけて数日後にだったら少し無理があるのかもしれませんね。
でも、クマムシは充分凄い生き物です。もし、縄文の遺跡から仮死クマムシが発見されて完全に蘇生出来たら、「縄文クマムシ」なんて呼ばれたりして(笑)。縄文蓮は見た事がありますが。
でも、縄文時代(約一万六千~一万年前)じゃ、多分、化石になってますかね。(^_^;)
ところで、水によって足が動いたかどうかですが、閑人さんのいうとおり、動くのは水をかけてすぐですが、数日経っているということは、観想を抑えるため、その都度、水を加えていると考えたほうがよさそうだと思いませんか?
なので、「水をやり始めてから数日後」と考えたほうがいいと僕は思っています。
120年クマムシをもどす時にあまり水をやり過ぎたら、水の加減によっては体の組織が破壊されるかもしれないなんて思います。
煮干を水出しした事がありますが、ついつい長く放置したら魚の組織が脆くなっていました。120年クマムシと乾燥させた魚はちよっと違うかな。(^_^;)
クマムシをどういった具合でもどそうとしたのか気になります。
その後の文章では誤字 (観想を抑えるため→乾燥を抑えるため) が含まれているという、さんざんの内容です。やはりアルコールのせいで、、、(また言い訳だよ)
やっぱり、あまりに古いものだと水与えるのも難しいかもしれませんね。とにかく小さいですし、まずはクリプトビオシスを見つけたこと自体偉いと思います。
顕微鏡撮影に成功したら、また記事にしようかと思っております。まだ先の話ですけど。
きっと忘れた頃にアップされるかと思います(笑)
昨日、お台場でやっているエイリアン展っを見てきました。「極限状態に生きる生物」として、やはり休眠状態に入るネムリユスリカを取り上げていました。
解説のお姉さんによるとクマムシよりも「上」だそうです。
休眠状態にあって、脳を削り取っても
50℃のお湯10分間で蘇生するのだとか。
お台場でエイリアン展なんてやってるんですか!?
えーと、ちょっと書きながら調べてみます。
、、、
お、まだやってますね。あんまり詳しく載ってないけど行ってこようかなー
>脳を削り取っても
すごいですよね。(笑)
カメラを持って(写真OK)、そして朝一
で行かれることをお勧めします。
日本科学未来館、エイリアン展の他
に常設展があり、じっくり見ようと思ったら
丸一日はかかりますよ。
ほー、朝から行って時間がないほど展示品が豊富なんですねっ!
是非是非行きたいですね、もう終わっちゃうから、なんとか時間を作っていって見たいと思います。
情報ありがとうございましたっ!
ってか仕事の関係であまりテレビは見れないんですけどね。そりゃつぶせば死んじゃいますね。指でつぶせるほど大きくもないですけどね。