■ハリガネムシ■
■Horsehair worms (Gordian worms)■
~ 昆虫を自殺させるムシ ~
(コオロギを自殺させ、脱出中のハリガネムシさん
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~ はじめに ~
ハリガネムシは、おそらく多くの方がご存じの生き物でないかと思います。特に男性の方は、ちびっ子時代に、自慢のカマキリのおしりからニョッキリ顔を出すハリガネムシを見て、ドン引きした経験も多いかと思います。
(ハリガネムシが寄生している) カマキリのおしりを水に浸すとニョロニョロと出てきますが、カマキリのお腹を指で押して刺激したり、おしりを棒で突っついたりしても出てきた覚えがあります。
今ではそんなことをする勇気も根性もありません。
~ 動く針金 ~
さて、ハリガネムシの話をしましょう。
名前の通り、非常に細長い生きもので見た目はまさに「針金」といった感じです。最大クラスで1メートルぐらいにもなるそうですが、ふつうはそんなに長くありません。10センチから30センチぐらいでしょうか。
ハリガネムシは、水中生物ということもあり陸上は苦手です。体が乾いてくると、触ってもほとんど動かないため、生きものにすら感じません。体も硬くなって、本物の針金のようです。
動かないからといって死んでしまったわけではありません。動かないハリガネムシを水に入れると、再びものすごい勢いで動き始めます。この動きがかなり気持ち悪いです。
泳いでいる、とか、前進している、とかそういった意志や目標はまったく感じられず、いわゆる「のたうち回る」といった動きです。
(ボールにためた水の中でうごめくハリガネムシさん
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~ ハリガネムシ陸上生活 ~
ハリガネムシは水中生物ですが、陸上の昆虫たち、カマキリやバッタ、コオロギ、カマドウマなどに寄生しています。どうして陸上の昆虫に寄生することが出来るのでしょう?
ハリガネムシの赤ちゃんは水中で孵 (かえ) ります。まずは蚊の幼虫 (ボウフラ)とか、カゲロウやウスバカケロウの幼虫、トンボの幼虫 (ヤゴ) といった水生昆虫に食べられるのを待ち、うまく食べられるとそれらの生物に寄生します。
この時点ではまだハリガネムシは大きくなろうとはしません。3ヶ月ほどかけて10~30センチにも成長するハリガネムシにとって、これらの昆虫は短命すぎる上、小さすぎるからです。
ということで、もう少し体が大きく長生きする昆虫、カマキリとかコオロギ、カマドウマなんかに寄生したいところです。
とはいっても自分では何も出来ませんから、そういった大型昆虫に宿主 (しゅくしゅ - 寄生虫が寄生している生物) が食べられるのを待ちます。
そして運良く目的の昆虫に宿主ごと食べられると、今度はその食べた大型の昆虫の体内に寄生場所を変更します。ここに来てようやくハリガネムシは成長をスタートさせます。
(死亡したコオロギから脱出するハリガネムシさん
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~ マインドコントローラー? ~
目的の昆虫に寄生したハリガネムシはどんどん大きく成長し、やがて成体となります。
成体に成長したハリガネムシには口がありません。これ以後、交尾して死ぬまで何も食べません。つまりもう寄生している必要がないということです。
今すぐにでも宿主の体から抜け出し、繁殖シーズンに備えたいものです。しかし、一か八かで出て行ったとしても、陸生の昆虫の暮らしているところですから、おそらく高い確率で草むらなどに出て行くことになるでしょう。
カマキリのおしりから顔をのぞかせ、周囲をチェックしたりします。「やっぱ無理か」といったおももちで頭を引っ込めます (そんな感情はないと思いますが)。
そこでハリガネムシは考えました、宿主を水中におびき出せばいいじゃないかと。ハリガネムシはただ昆虫の体を間借りしていただけではなかったのです。寄生している間に脳も乗っ取っていたのです。(注:1)
ハリガネムシが成体になる頃、宿主は自分の意志とは関係なく水辺に引き寄せられます。そして、決して生きていくことが出来ない水中に向かってダイブするのです。昆虫の自殺です。
待ってました!とばかりにハリガネムシは昆虫の体内からニョロニョロと這い出てきます。体を間借りされた上に、脳を支配され、最後は腹を突き破られて無惨な死を遂げる昆虫。
哀れな昆虫を尻目に、のたうち回りながらハリガネムシは水中に消えていきます。
注:1 ハリガネムシに寄生された昆虫 (ex. カマキリ) の脳から未知のタンパク質が発見されたことにより、ハリガネムシが脳を支配している = 水におびき寄せいている、という説がありますが、現時点ではタンパク質の働きが分かってない以上、脳を乗っ取るというのは確実な説とはいえません。
一部の寄生虫は非常にシンプルな作用により、宿主の行動を制御 していることがあります。ギニア・ワームのように自らが動くことにより、宿主の患部に燃えるような痛みを与え水辺におびき寄せるとか、宿主の食物を宿主の体内でかすめ取ることにより空腹にさせ、四六時中餌取りに専念させることにより、宿主を外敵から目立つ存在にさせる、といったような場合です。
しかし、多くの寄生生物が宿主に対し複数の化学物質で行動を制御 していることが知られており、特にハリガネムシに寄生された生物の脳内から未知のタンパク質が見つかっていることを考慮すると、ハリガネムシも見た目以上に複雑な行動支配をしている可能性が高いともいえます。
~ もう一つの特技 ~
水中にダイブさせられた昆虫ですが、当然、水中ではほとんどまともに動くことが出来ません。身動きが取れない昆虫を、そのまま黙ってみているほど自然は甘くありません。
昆虫が水中に身を投げた瞬間、ハリガネムシの脱出のチャンスであると共に、カエルや魚が (ハリガネムシごと) 昆虫を食べてしまうチャンスでもあるのです。
運任せともいえる、綱渡りの旅を続けたハリガネムシ。昆虫を水中におびき寄せるまでにも多くの脱落者がいたことは想像に難くありません。
うまく目的の昆虫に食べられなかったものは、その時点ですべて脱落しています。目的の昆虫に辿り着いたとしても、成長途中で宿主が鳥やネズミなどに食べられてしまったものもたくさんいるでしょう。
(カエルの口から脱出中のハリガネムシさん
こちらのページから動画ページにいけます。要QuickTime)
そんな困難を乗り越え、やっとの思いで宿主を水中にダイブさせたと思ったら、その瞬間に食べられてしまっては、今までの苦労も水の泡です。
しかし、ハリガネムシはめげません。宿主がカエルや魚の胃の中に収まったと知るや、宿主から抜けだし、カエルや魚の口やエラからニョロニョロと脱出してくるのです。
もちろん全部が全部抜け出せるわけではありません。たとえ低い確率 (2~3割) であっても、100%無理なところから生還するわけですから、これは現在のハリガネムシの繁栄に大きく貢献していることは言うまでもありません。
~ 馬の毛から産まれる? ~
ハリガネムシは英名で "Horsehair worms" とか、もしくは "Gordian worms" といいます。
まずは "Horsehair worms" 。Horsehair (ホースヘア) は「馬の毛」です。日本では針金で例えたように、海外ではその姿を馬の毛に例え、「馬の毛のような虫」と呼ばれているのでしょうか?
実はちょっと違います。これはかつてハリガネムシが馬の水桶からたびたび見つかることから、ハリガネムシは馬の毛 (特に尾の毛) から産まれるものだと信じられていたからです。
これは、ハリガネムシが寄生している昆虫が水中に入ると、その昆虫の体内から抜け出そうとする性質が大きく関与しています。
馬の毛が水中で動き出したのを不思議に思い、試しにもう一度、馬の毛の束を桶に入れてみます。するとどうでしょう、その中からまた「動く馬の毛」が出てくるではありませんか。
実際には、馬の毛の束に、ハリガネムシが寄生した昆虫が入っていたり、昆虫の体外に出て動かなくなっていたハリガネムシが混じっていただけですが、「馬の毛から産まれる」と信じている人にとっては、はなからそんな疑いを持たなかったでしょう。
~ ハリガネムシの結び目 ~
そしてハリガネムシのもう一つの名が "Gordian worms (ゴーディアン・ワーム - ゴルディオスの虫)" です。
ゴルディオスとはギリシア神話に登場する、フリジア国の王の名前です。ゴルディオス王は2本の紐 (ひも) を使い、複雑な結び目をつくりました。これを "Gordian knot (ゴルディオスの結び目)" といいます。
このゴルディオス結び目をほどいたものは、将来アジアの王になるであろう、といわれたことから、有力者たちが次々とこの結び目に挑戦しました。しかし、結局誰一人として結び目をほどくのに成功した人はいませんでした。このことから、"ゴルディオスの結び目"は「解決することが極めて困難なこと」を指す言葉になりました。
ハリガネムシは交尾シーズンになると、水中で雌雄が絡み合う姿が見られるため、その複雑に絡みあった姿をこの"ゴルディオスの結び目"に例え「ゴーディアン・ワーム (ゴルディオスの虫)」と呼ばれるようになりました。
~ 人間には寄生するか? ~
人間に寄生した例もいくつかあるようです。しかし、あくまで例外的、偶発的事故により人間の体内に入ったと考えられています。
というのも、ハリガネムシは無脊椎動物 (むせきついどうぶつ -たとえば 昆虫などの背骨のない生物) のみに寄生するものと考えられているからです。成体が人間の体内に入った場合、カエルや魚がハリガネムシごと昆虫を飲み込んだとき同様、口から這い出てくる場合もあるようです。
失神しますって。
(参考サイト)
相互リンクしてくださっている、「とある昆虫研究者のメモ」さん
昆虫のことが詳しく載っていますので、是非遊びに行ってみてください。
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昔拷問に使われていたと聞いた事があります。
ゲジゲジに毒があるって本当ですか?
拷問に?どう使うんですかね。
僕だったらあんなもん口に入れられたら何でも白状しますよ(笑)。
で、ゲジは超苦手な生き物ですが、小さいムカデみたいなものですからね。体の大きさからして毒はあっても弱いいんじゃないですかね?オオゲジは分からないですが。
ま、毒のあるなしにかかわらず、あのスピードは本当に恐ろしいっす。(笑)
しかも毒、あるんですね。脅威です
爪の間に入れるとかなんとか。人伝に聞いた話しだけど、虫の腹を突破るくらいだから なくもないのかな。どうなんでしょう
名前は聞いたことあるんですが、動いてるのは始めてみました。
うぅ きもちわりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!
>衆鋪尉搜・さん
なんかハリガネムシ、人間の肌は無理だそです。口も何もなくて、とんがった頭部を押しつけるだけなんで、たぶん人間の皮膚は破れないんじゃないですかね。
ゲジはほんと気持ち悪いんですが、ウィキペディアによるとゴキブリとか食ってくれる益虫だそうです。人間に害はないそうです。でもあの姿とスピードが、、、
>通りすがりAさん
はじめまして、通りすがりAさん
見たことなかったですか。つーか、たぶん目にしたことはあると思いますが、動かないと生きものに見えないので気付かなかっただけだと思います。
で、気持ち悪いっすよね。口から出てきたら、気絶しますよ~
早く次の記事を書いて、後ろに回さないと。(笑)
探偵ナイトスクープで存在を知りました。
あるカマキリの糞で出てくる。という企画で。。正直ドン引です。。。
猛毒だったとゎ。。。。
色々とブログの記事を拝見してて
スベスベマンジュウガニはバカウケでした。
「ハイスクール奇面組に出てきたアレが!」って感じで(笑
ハリガネムシ、キモいのの極致ですが、毒はないです、口に入れても安心です。
あ、毒は、スベスベマンジュウガニのことですか?あれの名前ヤバイですよね。
ドクイリマンジュウガニとかに改名した方が良いですよ。あれ食べて死んだら、死んだのに笑われそうです。
_| ̄|○||| ガクリ そうなんですよね~子供の頃って怖いもの知らず・・・。
ワタクシ実はハリガネムシを近所の川で発見し「世紀の発見だ!これは新種だ」と持ち帰り名前までつけて育てていました・・・。
いつの間にかいなくなってたけど( ゚∀゚)・∵.・ガハッ!!
そして大人になってふと「あの生き物ホントなんだったんだろう」と調べて寄生虫だったことに大きなショックを・・・。
ってか、寄生虫だったというより普通に何処でもいる虫だったことが1番ショックだったのは言うまでもないか(T▽T)
ちなみに幼き日の管理人は、ヒルをキアゲハの幼虫と思いこみ (←全然似てない)、海苔のいれものに、50匹ぐらい捕まえて、家に持って帰ったところ、親が卒倒しそうになりながら、「それヒルだよ!」といったのを覚えています。
子供は本当に恐ろしいです。
水に入れると動く謎の針金がこの虫だったそうです
あれ見ましたよ、覚えてます。
かなりインパクトがありましたが、ハリガネムシとは教えてくれませんでしたよね。
もし、本当だとしても好きにはなれませんね。
まあ・・・ちゃんと調べたわけでは無いのであまり信じないでくださいね。
うちもオオゲジの記事があるんで見てくださいな。別に好きじゃないですが、益虫として取り扱っております。(笑)
水かけたら動くんでしょうか?
ハリガネムシって寿命ってあるんですか??
乾燥状態じゃないならせいぜい長くて半年とかそれぐらいが寿命じゃないですかね、乾燥状態だとどれぐらいか分かりませんが、体が大きいですしクマムシのような長期間は耐えられないような気がします。
> 1年乾いたままにしても
> 水かけたら動くんでしょうか?
>
> ハリガネムシって寿命ってあるんですか??
ありがとうございます!
昔職場でカマキリのお尻にハリガネムシが、二匹(もう一匹は天国に行っていました。)も出て来たのを思い出しました。
私が、見たハリガネムシは地面を水中と勘違いして出て来た様でした。
しばらくもがいていましたが、中に入ったので天国に行ったかは不明です。
ハリガネムシを観察してるなんてすごいですね~(笑)
たいていの人はあの動きにビビって正視することすらできないのに。
ところで天国に行ったと思われるハリガネムシさん、周りに水がなくて乾くと針金みたいに固くなって動かなくなるので、もしかして死んでなかったのかも?
今日犬の散歩中にこいつを見ました!アスファルト上の砂の中で2匹、のたうっていて、「生き物?生き物なの?」とビビりながらも、生きてるみたいだしとティッシュではさんで草むらに逃がしました。
でも記事を拝見して、そんなことしなくてもよかったかもと後悔しています。こやつらの犠牲になるかもしれない虫さんすみませんでした。でも水中に放したのではないから、だめだったかもしれませんね。
勉強になりました。ありがとうございます。
ふつうビビってその場を立ち去りますからね。(笑)
あと、もうでっかくなったハリガネムシは一度体外に出たら昆虫に再度寄生するのはまず無理だと思いますので、今後犠牲者は出ないと思います。
そうか、もうだれも侵略されなくて済むんですね。安心しました、感謝です。
みたとき、ミミズのこどもかと思ったんです。でもなにか確実に違いますよね、生き物として根本的なところが。見た瞬間なけなしの本能が危険を察知して喚き出す、みたいな。
こちらで正体がわかったあと、誰かがわざとあの砂の上に置き去りにしたのかもとか考えていました。あそこに至るまでのルートが気になります。2匹セットでしたし。
ともあれ今後は絶対スルーします。
ご教授、ありがとうございました。
> そうか、もうだれも侵略されなくて済むんですね。安心しました、感謝です。
>
> みたとき、ミミズのこどもかと思ったんです。でもなにか確実に違いますよね、生き物として根本的なところが。見た瞬間なけなしの本能が危険を察知して喚き出す、みたいな。
>
> こちらで正体がわかったあと、誰かがわざとあの砂の上に置き去りにしたのかもとか考えていました。あそこに至るまでのルートが気になります。2匹セットでしたし。
>
> ともあれ今後は絶対スルーします。
> ご教授、ありがとうございました。
寄生虫目線で見れば、今回同様、助けてあげるのもいいかもしれません(笑)
セットで発見されたということは、やっぱりカマキリなりコオロギなり、発見場所近くで昆虫のお腹から出てきたんでしょうね。水辺が近くにないということは、昆虫が事故で死んで (人間踏まれたり、鳥に食べられたりetc) そこから出てきたんだと思います。カマキリのお腹に何匹も入ってますからね。